2015年ベストアルバム(ロック編)
- Donnie Fritts - Oh My Goodness
- Fermin Muguruza - Nola Irun Meets New Orleans
- Jack + Eliza - Gentle Warnings
- Jim Lauderdale - Soul Searching, Vol.1 - Memphis
- Justin Townes Earle - Absent Fathers
- Keith Richards - Crosseyed Heart
- Post Script - If Not For You
- Punch Brothers-The Phosphorescent Blues
- Roadside Graves - Acne - Ears
- Shoos Off - Kiss the Television
- Steve Forbert - Compromised
①のドニー・フリッツは、基本的に「プローン・トゥ・ラーン」と同じ。その余にも変わらない様が神々しくさえあった。
②のフェルミン・ムグルサはフジロックにも出たことがあるスペインのロッカー。本作はニューオリンズ録音。元はスカパンクやハードコアパンクだったらしいが、ニューオリンズなアレンジにおいてもそうしたスピード感を伴ってい るのが凄い。バックの音の密度や圧力もかなりカッコいい。ロックからブラックミュージックに、ヨーロッパからアメリカ音楽にアプローチしたうちでは最も良質な成果のひとつ。
③はニューヨークの男女デュオ。実を言うと今年、このアルバムこそ最も聴いた新譜だ。余計なものをすべて排除した、歌の結晶のようなアルバム。本当ならなければならないはずのものさえ省いているのに、どうしてこんなに胸が締め付けられるかが不思議だ。ヤング・マーブル・ジャイアンツが持っていたある部分に水を与えたらこうなった、という感じ。2月の時点ではたちというから期待が持てるが不安でもある。今回の焼き直しじゃつまらないし、ゴテゴテと何かを加えても贅肉をつけたようにしか見えないだろうから。色んな意味で次に注目。
④はイントロでやられた。ニック・ ロウのコラポなどのキャリアがあるカントリー・シンガー、ジム・ランダーデイルによる、ロイヤルスタジオでの録音。タイトルから察するに原点回帰のため、 メンフィス(ブラックミュージック)とナッシュビル(カントリー)のそれぞれ2大聖地で名うてのミュージシャンと共にレコーディングした音源を2枚に分け ての新作で、こちらは前者。ルーサー・ディッキンソン、チャールズ・ホッジス、デビッド・フッド、スプーナー・オールダムなどバックの顔ぶれを見ただけで 濡れる。ウィリー・ミッチェルは当然いないわけだが、それでもなおハイ・サウンドを再現しているのが落涙必至。バックも相当だが、ランダーデイルのソングライティングやボーカルの味もかなりのも の。ナッシュビル編もかなりいい。
⑤はタウンズ・ヴァン・ザントの息子。前作の続編的なアルバ ムのようだが、そちらは未聴。前作が「Single Mothers」というだけあって、どのようなコンセプトのアルバムなのかは想像がつく。重苦しいわけでもなく、しかしぶっきらぼうでもなく、自分の内面 を吐露するかのようなボーカルとサウンドには好印象。傑作。
⑥は最高。食事から10分後に「腹減った、何も食ってねえ」と真顔で言い出しそうな佇まいの近年のキース。冒頭のヘタウマなブルースを聴いた当初は敬老精神を全開にして暖かく受け入れようと試みたが、2曲目でそんな生暖かい配慮は消えた。このじいさん、やっぱ只者じゃねえ。奇をてらうでもなく、変に力むでもなく、自然体で自分から溢れるものだけで出来ているアルバム。ディランもそうだが、無理に絞っているのではなくキースのなかから自然に溢れてくるもので作ったのが凄い。もうストーンズなんかやめてソロだけやってくれ、と言いたいぐらい最高だ。キース、ボケていたのは俺のほうだよ。
⑦はカナダの3人組のファースト。ジャケットが秀逸で、音楽性をよく表していると思う。似たようなアメリカーナに傾倒したシンガー、グループはたくさんあるのに何が違うんだろう? とりとめなく考えるが結論はでない。ああ。
⑧はアメリカ音楽の新しい可能性を広げたアルバム。実際に可能性云々などと評論家まがいのことを語れるほどアメリカ音楽を知悉しているわけではないからハッタリもいいところなのだが、そうした誇大妄想的な賛辞を捧げたくなるほどの傑作。編成や音色そのものがアメリカーナでありながらも、楽曲やアレンジが従来のそれとはまったく異なる個性的なバンド。
⑨は結構なキャリアとリリース枚数があるニュージャージーのロックバンド。パンクスにはぶん殴られそうだし、自分でもあんまり似てないとは思うのだが、なぜか初期のクラッシュと通じるものが伝わってくる。イデオロギーではなく、気持ちの部分で。そうだ、初期クラッシュとジェリー・ハリソンがいたころのモダンラヴァーズを合わせた感じだろうか? こういう弱いボーカルの楽曲は昔なじみのものか、よっぽど味があるもの以外は聴かないつもりだったのに、そんな決意を揺るがすような妙な魅力がある。
⑩は今年発掘したロック系の若手ではジャック+エリザと並んで気に入っている。Bandcampで発見した西海岸のポップグループ。同サイトではR&B SOUL FUNK HIP-HOPとタグづけされているが、ブラックそのものを志向しているというよりは、そうしたブラックミュージックの影響を強く受けたポップグループという印象が強い。地に足がついていないようなふわふわしたトラックの音、情けないファルセットの声、マイナーを多様したコード進行が切なくてたまらない。こんなショボいグループがどうしてこんなに琴線をくすぐるのか、本当にそれが不思議。
⑪はベテランのSSW。正直なところその存在をずっと忘れていたが、 本当に胸に染みた。他の誰かだと短所になるような部分が実に力みがちで不器用な歌い方がたまらなくいい。サウンド的にわかりやすいコンセプトはない。昔から続けてるようにあたりまえに作った曲を、当たり前にうたって、レコーディングしただけだ。そのあたりまえさが実に刺さる。
次点として印象に残ったアルバムは以下のとおり。
Dale Watson - Call Me Insane
Blackberry'N Mr. Boo-Hoo - The Many Sides Of…
Bob Dylan - Shadows in the Night
Danny Kroha - Angels Watching Over Me
Elliott Murphy - Aquashow Deconstructed
Elvis Perkins - I Aubade
Emmylou Harris & Rodney Crowell- The Traveling Kind
J.D. Souther - Tenderness
Jesse Malin - New York Before the War
Jesse Davey - Big Blues
Joseph Arthur - Days of Surrender
Lillie Mae Rische - Rain On the Piano
Mark Ronson - Uptown Funk
Megan Dooley - Made in Kalamazoo
Mekons & Robbie Fulks - Jura
Milk Carton Kids - Monterey
Nathaniel Rateliff - Nathaniel Rateliff & The Night Sweats
Pokey LaFarge - Something In The Water
Rhiannon Giddens - Tomorrow Is My Turn
Ryan Adams - Live At Carnegie Hall
Ryley Walker - Primrose Green
Sarah Gayle Meech - Tennessee Love Song
Shawn Colvin - Uncovered
Shovels & Rope - Busted Jukebox Vol.1
Slim Bawb & the Fabulous Stumpgrinders - Ain't My Monkey
Southside Johnny & The Asbury Jukes - Soultime
Steve Earle - Terraplane
Sufjan Stevens - Carrie & Lowell
Los Texmaniacs - Americano Groove
They Might Be Giants - why
Tobias Jesso Jr. - Goon
・・・多すぎだろ!
これでもかなり絞ったんだけどなあ。
カントリー、ウェスタン・スウィング、ベテランのロック、ホワイトブルース、SSW・・・どれも聴き応えがあった一年、下半期は久々にそのあたりにどっぷりハマりました。
ソウルものの再発がイマイチ活発ではなかったせいか、ここ10年では白人の新譜を最も聞いたと思うし、新しい出会いと発見とがあった1年で充実していた。
その他、レゲエではアイ・コングとライオンズ、アフロビートではフランスのフレレス・スミス、英語圏以外のブルースではアルゼンチンの Nico Smoljan & Shakedancersがよかった。
J-POPは片手も聴いていないが、正直どれもイマイチ。
次回はリイシュー・発掘もののベストを選出。
コメント
コメントを投稿